ぼっち氷河

畠山 淳

初めて氷河の上に立ったのはパキスタンのパスー氷河でした。

中国からバスで5000M近い国境を越えて、入国後に乗合ジープでフンザの中心地カリマバードを目指していましたが、パンクで数時間立ち往生。日も暮れ、白人旅行者達と今晩は野宿かと冗談交じりに話していたが、運よく通りかかった車に応援を託すことが出来、しばらくしてなんとか再出発。
最初のパスー村に着いた時には時間も遅く、お腹もすいていたので途中下車して宿泊することに。

しかし、停車した目の前にある安宿から同乗していた白人2人組が出てきて満室だと言う。離れたところにもう1件安宿があるとのことなので付いて行く。車で来た道を戻る感じだが、電灯とか全く無いのでライトを点けないと足元さえ見えない漆黒の闇。この道、カラコルムハイウェイというたいそうな名前が付いているのだけど。

翌日、朝食後に食堂に置いてあった情報ノートを読んでいると、パスー氷河への行き方が簡単に書かれていたので行ってみることにした。静寂のカラコルムハイウェイを歩いて、情報ノートに書かれていた目印の箇所から奥に入っていく。このまま右の禿山沿いを進めば左手に氷河湖が見えてくるらしい。

途中、氷河帰りと思われるガイドを連れた日本人旅行者が向こうからやって来て、俺の身なりを見て絶句。軽装にサンダル履き。「それで行くの?一人で?」と目を丸くする。こちらとしては、君達に出会ったことで情報ノートの正しさが分かって安心しているのだが。

そのままどんどん進むと氷河湖が見えてきた。しかし、右の岩肌沿いに歩けるスペースは30~40cm程度。左は断崖絶壁で落ちれば氷河湖にダイブ、奇跡的に無傷でも心臓麻痺で死ぬと思う。実際は100M程度だと思うが、ゆっくりとしか進めないので長い恐怖の時間が続いた。帰りもここを通るのか。。。

危険地帯を過ぎてしばらく行くと、右の禿山の斜面を登って行くことが出来る。山頂から向こうの斜面を下っていくとパスー氷河の上に着くらしい。
しかし、登っている途中で急に雨が降ってきた。むき出しの斜面にしゃがんで、旅行者から貰った派手な黄色い傘を差す。遥か下に見える氷河湖と山と空、自分以外誰もいない世界を堪能する。

雨がやみ、滑りやすいサンダルに注意しながら登頂。下ったところが氷河の上だ。流石にガイド無しで氷河を歩き回るのは自殺行為なので、端の方だけ慎重に歩いて終了。
結局、宿に帰るまで人を見かけたのはあの日本人達だけでした。

最後に、多くの人はカラコルムハイウェイと聞いても全くイメージできないと思うので、ウィキペディアから拝借した写真を載せておきます。多くの部分がずっとこんな感じで、落石地帯や断崖絶壁の落ちたら死ぬバージョンが続いたりします。たまにトラックとか谷底に転がっているのはご愛敬!

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