三井記念館で「円山応挙―革新者から巨匠へ」を観てきた

営業冨田 涼

三井記念館で開催中の「開館20周年特別展 円山応挙―革新者から巨匠へ」に行ってきました。
タイトルのとおり、“革新者から巨匠へ”という流れを丁寧にたどる展示で、応挙と三井家の関係がしっかり強調されていました。どうやら三井家が応挙を援助していたらしく、スタンダードな応挙=王道の日本画、そしてそれを支えた三井家もまた王道、というブランディングを感じます。

展示の序盤は、中国画の模写や“眼鏡絵”と呼ばれる遠近法の練習作など、応挙が技術を磨いていく過程が見られます。そこからいよいよ屏風の展示へ。無駄がなく、描くべきところだけを描く——シンプルでありながら、よく見ると高度な技巧に裏づけられているのが感じられます。

印象的だったのは《竹雀図屏風》(天明5年・1785)。竹やぶの中で遊ぶ雀たちの描写が軽やかで、余白がとても美しい。

続いて、金刀比羅宮にある襖絵《遊虎図襖》(天明7年・1787年)
虎がモチーフになっていたのですが、応挙は実物を見たことがなく、毛皮を模写してから作品を描いたそうです。そこまでして描いたのは当時まだ珍しかった虎を描くことで話題を呼びたかったのか? 少なくとも会場の来場者の興味を引くことには成功しており、みなさん写真を撮っていました。

なお、金刀比羅宮の隣の部屋の襖も応挙作の《竹林七賢図襖》(寛政6年・1794)。中国の竹林の七賢人をテーマにしています。こちらも今回展示されていて、当時の異国趣味の流行を感じました。

そして今回のハイライトが、若冲との合作。
若冲の《竹鶏図屏風》(寛政2年・1790以前)と、応挙の《梅鯉図屏風》(天明7年・1787)が並べて展示されていました。応挙の鯉が、左側の若冲の屏風(鶏)のほうを向いている構図。逆に、若冲の鶏は羽根がS字を描き、そのラインが、自然と右側の応挙の鯉へと視線を誘導していく。それぞれの画家が自分らしい絵を描きつつ調和が取れているところが素晴らしい。

久しぶりに日本画の展覧会に行きましたが、「写実」と「デザイン」のバランス、日本画の王道に触れた気がしました。

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